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2006年6月17日 (土)

『クライマーズ・ハイ』完読記念

本屋を歩いていたら3列にもわたって同じ文庫本が山積みされていた。クライマーズ・ハイ』なるこの本を、ぼくは山登りの本であるに違いないと早合点した。著者が横山秀夫氏だったので一応手にとってみた。『臨場』ではなかなか楽しませてもらったので、ちょっと興味を引かない題材ぽいが裏のあらすじだけでも読んでみようと思ったのだ。そしたらナントツイ最近に再読成った『沈まぬ太陽』の第二部の主題である御巣鷹山日航機墜落事件に関する小説ではないか!しかも主人公は新聞社の記者。『沈まぬ太陽』とは違う切り口から事件に迫るに違いない。即座に買うこと決意。

大学の授業はモノによっては聞く「価値」が見出せない講義がある。このような場合、ぼくを含めた学生は二通りの行動パターンを示す。つまりは「寝る」か「内職をする」かのどちらかだ。読書は内職というには惜しい崇高な行動なので「自習」とでも呼ぼう。これまたなかなか面白かったのでついつい手が進んでしまい、ごく短期間で読み干した。

主人公は記者だが、ぼくは記者とはどのようなものかよく知らない。大多数のひとが持っている知識は先入観に近いものだろう。ぼくは一度だけ記者に相対したことがある。去年の獣医学祭の展示特設会場に現れた○日新聞記者さんを相手したのだ。去年の展示の題材は『骨の動物園』だった。その設営部隊の幹部クラスだったのでぼくが話をせざるをえなかった。はじめは貴重な体験だし少々質問されても答えられないはずがないと踏んでいたが、その中年の記者はしたたかで大要を捉えた質問をしてきたのだった。いちばん困ったのは「この展示の意義は何か」という質問だった。なぜそんな質問が答えられないかと思うかもしれないが、実はぼくたちクラスのなかで展示に関する意見が分かれていた事実があった。

「ある骨全部みせよう派」と「きちんと説明できる骨だけ出そう派」に意見は分かれた。獣医学部学生といえどナントカウサギとかナントカタヌキとかまでの骨格はわからない。卒業生も然りだろう。事前に勉強して武装したところで詳細を説明できるのは馬牛羊ヤギとか犬猫くらいな訳だ。ぼくの意見は後者で、結局前者の意見が採用された。展示された動物のトリビアを張ることで展示の意義を持たせることができると熟考の末結論付けて、ぼくの仲間は必死にトリビアネタを専門書から、一般書から探してきたものだ。ちなみにぼくは「アカデミックにして」と難題を吹っかけてきた○剖学教官への対応及びマニアックなお客に教えるネタにするため競走馬の骨折とレントゲン写真についてまとめた。それはそれは展示会場は盛況で、白衣を着たぼくたち展示係は心躍らせながら来賓に解説してまわったものだ。

記者さんはその盛況を見てやってきたのだろう。そして薄いコンセプトに気付いた。「みせることが目的」ということになってはいたが、記者さんはぼくたちにもっと深いコンセプトを期待せずにはいられなかったのだろう。おそらくぼくの答えには若干失望したはずだ。翌日の新聞にはちょこっとした記事が載った。彼が手加減をしなければ批判記事も書けただろうが、ぼくたちは公的な立場に無いし、紙面で批判するにも及ばない相手だったという訳だ。いずれ公人になったら、このようなテツは踏みたくないものだ。名刺をいただいて気付いたのだが、その記者さんは自然保護とかについて書くひとで、ただの記者ではなかったらしい。学祭はというと、それまでの学年がヤル気がなかったのでそれと比べると各イベントともに前代未聞クラスの活況を呈したし、展示部門も素晴らしい数の意見投書をいただけた。いい思い出だナ。

こんなわけで元記者だった『クライマーズ・ハイ』著者の横山秀夫氏が書く本書を実に楽しむことができた。内容については言及するのを避けよう。

2006年6月18日土曜日 24:40

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