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2006年11月17日 (金)

ウイルスたちの進む行方は

ぼくに与えられた使命、それはBVDVの遺伝子解析。あるところから送られてきたウイルスの遺伝子を読むことで、そのウイルスの株型を鑑定し、どのような経路で感染が発生したか掴むのだ。
BVDVとは、牛粘膜下痢病の原因ウイルスである。おとなの牛は罹っても下痢をするくらいだが胎子が感染すると延々とウイルスを排出し、感染源となる「持続感染牛」となってしまうため、注意が必要だ。
遺伝子解析にはRT-PCRとPCR、シークエンスを行う必要がある。BVDVの遺伝子は不安定なRNAなのでまずこれを逆転写してcDNAを作成するのがRT-PCRである。RNAは唾が飛んだだけで酵素で分解されてしまうので取り扱いに注意が必要。ゴム手袋は必須です。
PCRはご存知の方も多いかもしれないが、DNAを倍倍に増やすものである。
シークエンサーは面倒なので詳細は省くが、要は塩基配列を読んでくれるものだ。
何回か失敗を経て、遂に作戦を完遂、某県の牛からとれたウイルスの系統樹を作成して提出を済ませることが出来た。依頼主の方、遅くなってすみません。
ちょっと珍しい株が出てきたので面白かった。

さて、わが隊で主に扱っているウイルスはインフルエンザウイルスとぺスチウイルスである。ぼくは後者の担当な訳だ。このふたつのウイルス、ともにRNAウイルスだが、大きな差がある。

インフルエンザウイルスは世代を経ることで強毒化していく傾向にある。
ぺスチウイルスは世代を経ることで弱毒化していく傾向にある。

クローズアップされやすい病原体は、劇的な症状を宿主に引き起こす。インフルはそれにあたる。宿主の免疫がはたらく前に一気増えてケリをつけて新しい宿主に渡っていくまさに剛球派である。
BVDV(ぺスチ)のようなウイルスは宿主に劇的な症状を引き起こさない、が、逆に宿主の免疫から見つけられないように暮らすことでまったり増えて世代を繋いでいる訳だ。もちろん宿主がなかなか死なないので「病原体」としては注目を浴びにくい。

両極端な奴らだが、これは別に彼らに進化の意志があるわけではなく、単に増えるサイクルが最も効率が良いスタイルに収束してきた結果である。
ま、不可思議で想像力を掻き立てる話である。

2006年11月16日木曜日 25:33

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